| 「剣奏でる戦いの唄」 剣の精は正直、嘆息していた。というのもアルサリスの成長の度合が普通ではなかったからだ。 初めて刀を握った時は剣を振ったこともない、といった腕前と呼ぶのもおこがましい程度だったのに、今や狼 相手に互角に戦っている。実際狼と戦う前は (絶対勝てないって!やめろー!!) と、剣の精が怒鳴ったものである。だが…。 (こいつ…戦いながら強くなってる…しかも普通じゃない…) そう言っているうちにアルサリスの剣が狼を地に伏させた。アルサリスは無言で狼を捌き、幾ばくかの肉をバ ッグにしまいこむと、ふぅ、と一つ息を吐き地面に腰を降ろした。 「絶対勝てない、と言ったな」 誰ともなく呟く。剣の精はしどろもどろに答える。 (え、と…あのー、あは、あははは…) 妙に乾いた笑いであった。 「お前が」 と言ったところで向うの茂みがガサリと揺れた。血の匂いに誘われてまた1匹の狼が現れたのだ。 真紅の瞳が狼の目を射抜く。すぐには飛び掛って来ない。 (警戒してる…さっき剣を握ったばっかりの人間を、警戒してる…) 「いくぞ」 と、剣の精に一声かけると狼めがけて走りだす。 初めのうちは互角だった。だが徐々にアルサリスの剣戟が当りだし、狼の牙が空を切ることが多くなってきた
。 アルサリスはバッグから裁縫道具を取りだすと、今しがた手に入れた皮で何かを作り始めた。 と、また狼が現れた。 |
|
|