「剣奏でる戦いの唄」

 剣の精は正直、嘆息していた。というのもアルサリスの成長の度合が普通ではなかったからだ。
 初めて刀を握った時は剣を振ったこともない、といった腕前と呼ぶのもおこがましい程度だったのに、今や狼 相手に互角に戦っている。実際狼と戦う前は
(絶対勝てないって!やめろー!!)
 と、剣の精が怒鳴ったものである。だが…。
(こいつ…戦いながら強くなってる…しかも普通じゃない…)
 そう言っているうちにアルサリスの剣が狼を地に伏させた。アルサリスは無言で狼を捌き、幾ばくかの肉をバ ッグにしまいこむと、ふぅ、と一つ息を吐き地面に腰を降ろした。
「絶対勝てない、と言ったな」
 誰ともなく呟く。剣の精はしどろもどろに答える。
(え、と…あのー、あは、あははは…)
 妙に乾いた笑いであった。
「お前が」
 と言ったところで向うの茂みがガサリと揺れた。血の匂いに誘われてまた1匹の狼が現れたのだ。
 真紅の瞳が狼の目を射抜く。すぐには飛び掛って来ない。
(警戒してる…さっき剣を握ったばっかりの人間を、警戒してる…)
「いくぞ」
 と、剣の精に一声かけると狼めがけて走りだす。

 初めのうちは互角だった。だが徐々にアルサリスの剣戟が当りだし、狼の牙が空を切ることが多くなってきた 。
(まただ…また強くなってきた…)
 最後には圧倒的ではないにせよ、狼を上回っていた。剣の精は先程の戦いよりも短い時間で片がついたことに 気付いた。
(腕だけじゃない。致傷させる技術も、急所の捉え方も上手くなってるんだ)

 アルサリスはバッグから裁縫道具を取りだすと、今しがた手に入れた皮で何かを作り始めた。
(?なにやってんの?)
「生活の糧を得るために、な」
 そうして出来あがったのは皮の帽子。
(うわ、出来た…)
「だが、これは買取ってくれる店がないんだ。もう少し上手くなればもっと色々作れるようになるから、その為 の修行といったところかな」
(へぇ)

 と、また狼が現れた。
「さぁ、いくぞ」
 剣の精に声をかける。
(おっけい!)
 いつの間にかはわからないが、剣の精はアルサリスが気に入っていた。
 剣の精の気持の変化に答えたのかはわからないが
(…あれ?今、剣が唄った…?)


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